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秋良は北上の住むアパートで3日過ごし、週末に自宅へ戻る。 それについては北上も教えてもらっていたし、寂しいとは思いつつも理解して束の間の2人の時間を大切に満喫した。 そして約束の今日が来て、朝早くに秋良は新幹線を利用して帰るのだと。 思って。 覚悟して。 なのに。 「……せんせいは、廊下で少し待ってて」 「う、ん……」 昨夜、毎回のように北上のベッドに入ってきた秋良が突拍子もなく『明日はせんせいも一緒に来て』と言ったのだ。 だから今、北上は秋良が暮らす実家を訪れている。 彼の家が一般的ではないことは建物を見る前から分かっていたのに、その純和風な日本家屋に庭園、出迎えに現れ荷物を預かり前を歩く侍女の存在など、圧倒されるばかりだった。 客間に着き、侍女がその場で正座する。 「失礼します。奥様、秋良様がお帰りになられました」 言って、向こうから「入りなさい」と言う理事長の返事。 北上は隅に避け、襖が開かれると秋良は依然とした様子で室内へと足を踏み入れた。 行ってしまった。 「私も失礼します」 「あ、はい」 着物姿の侍女の会釈に、北上も慌てて真似をする。 所作が綺麗な彼女の後ろ姿を見送ると、時間を持て余すように背後を振り返っては手入れが行き届いた美しい中庭を眺めていた。 *** 秋良が客間に入室すると、正面に祖母、右手に祖父、左手に両親という形で1つの座卓を囲っていた。 卓上にはそれぞれに湯のみがあり、中央に置かれた菓子器の中のせんべいのいくつかは、祖父と母の手元にあった。 彼らの表情や雰囲気の通り、張り詰めた空気ではないのだろう。
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