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『最低だな』
何か、汚いものでも見るかのような冷たい瞳。
愛おしい彼の腕の中で守られた女は、こちらを見て楽しそうに笑っていた……。
__不意をついて夢に出てくると、本当に吐き気がする。
「思い、出すな……っ」
あれから二週間。
二人とは、会話もしなければ顔も合わせていない。
退部届けは出したものの顧問が了承してくれないため、未だに部活へは行っている。
後日からは、その出来事が噂になって学年全体に広まり、歩けど歩けど周囲からの軽蔑の眼差しや女子達の話し声が耳について鬱陶しかった。
元々、話す友人と呼べる相手もいなかったから差して苦にはならなかったが、今まで気軽に声をかけてくれた人達からも避けられるとなると、自分の肩身も狭くなるようだった。
『あの男子、友達の彼女に手出したんでしょ?』
違う。
『あんな大人しい顔のくせに言葉で脅して暴力振るわれそうになったんだって!』
『うわっ、最悪ー』
『怖すぎるよね』
違う。
違う。
全部、違うのに。
誰一人として、それに疑問を持ってくれる人はいなかった。
どうせ自分は一生一人だ。
今更寂しいも悲しいもない。
「秋良が昼寝って珍しいな?次、移動だぞ」
教室の窓際、一番後ろの席。
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