教室の一番遠くへ遠くへ

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教室の一番遠くへ遠くへ

 国語の時間。  今日は、『遠くへ』、をテーマに、授業の後半、それぞれに、詩、歌、短歌、川柳、ショートショート、ショートコント等々、何でもいいので、即興で、創作発表する時間となっていた。  授業の前半。先生が、いろいろと、創作のコツやヒントを説明していた。  僕の席は、教室の廊下側の一番後ろ。  窓側の一番前の席に、僕の彼女が座っている。  教室内の席の位置関係としては、一番遠くに離れていることになる。  ありがたいことに、僕たちは、一応、クラス公認のカップルということになっているらしい。  だからと言って、みんなの前でイチャついたりしたら嫌われるので、クラスでは、実に、アッサリとした関わり方をしている。  僕は、何か、ちょっとした意外な創作発表をしたいな~と、アイデアを練っていたら、モーレツに、屁をこきたくなって来たッ!  ちょっと、かなりの放屁量(ほうひりょう)がありそうだから、みんなにバレて嫌われそうだな~……。  そんなことを思いながら困っていると、ちょうど、僕の魔法瓶製の水筒のお茶が、(から)っぽ、であることを思い出した。  コレだッ!  僕は、行き場のないモーレツな屁の放出と創作発表の、一石二鳥な解消法を思いついたッ!  僕は、空っぽの魔法瓶製の水筒の、ネジ式のフタを開け、もちろん、ズボン越しではあるが、お尻に魔法瓶を押し当てて、  ス~~~~~~~~~~~~……、  と、お腹に貯まっていた、ぬっくぅ~~~い屁を、ゆ~~~~~~っくり、1mmも逃すことなく、目一杯、パンパンに詰め、ネジ式のフタをキュッと閉めた。 「先生ッ!」  僕は、颯爽(さっそう)と右手を挙げた。 「どうした?」 「創作、思いつきました!」 「お~、早いな~!」 「何でもいいんですよね?」 「いいよ」 「彼女へのプレゼントという形で、表現したいと思います!」  クラスメイトたちから、一斉に、 「ヒュ~ヒュ~♪」  の声が飛び交い、彼女も顔を真っ赤にしていた。 「ほぉ~、プレゼント! おもしろそうな発表になりそうだね~♪ じゃあ~、みんなの創作の参考にもなるだろうから、トップバッターでの発表、お願いします!」 「はいッ!」  とりあえず、僕の席から彼女の席へ、クラスメイトたちを介して、僕の魔法瓶製の水筒を回してもらった。  彼女は恥ずかしそうに、顔を赤らめながら、僕の方を向いて、「ありがとう!」、と一言。すると、再び、クラスメイトたちから、 「ヒュ~~~ッ!」  と、冷やかされた。  僕がニコッと微笑み返し。  彼女が水筒のネジブタをひねって、コップにお茶を注ごうとする。  が、しかし、 「あれ? お茶が出ない?」  彼女が、ネジブタを全開に、パカッ! と(はず)した瞬間だった。 「くぅっさーッ! ぬっくぅ~ッ!」  と、大絶叫ッ!  僕は、極太の黒の油性マーカーで、ノートに大きく書いたタイトルをみんなに見せた。 「プレゼントのタイトルは、『自分の席から、教室の一番遠(いちばんとお)くへ(とお)くへ』!」  みんな、キョトン?  僕は、ページをめくって、本当のタイトルを、みんなに見せた。 「……=(イコール)、『自分の席から、教室の一番とおくへとおくへ!』」  みんな、キョトン?! キョトン?! 先生からも、 「ん? どゆこと?」  と、(たず)ねられた。 「タイトルを、一旦分解して、再構築すると~~~……、『自分の席から、教室の一番遠くへと、()()』! なんつって!」  彼女は怒って、くぅっさい、ぬぅ~っくい屁が詰まった魔法瓶製の水筒を机の上に全開のまま置き、うなぎの蒲焼(かばや)きでも(あお)ぐかのように、団扇(うちわ)でパタパタと扇ぎ出した。 「くぅっさ~~~ッ!」  みんなから怒られちった!
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