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男子の憧れの的である小松さんと、お調子者でムードメーカーの高瀬。
そんな人気者同士のカップルをおそらく同じ1年生の中で知らない生徒はいないだろう。
元々、親友同士のように仲の良かった2人は、付き合い始めてからも決してそれを崩すようなことはしなかった。
他のカップルのように手を繋いで廊下を歩いたり、並木道でキスをするようなことなどありえない。
それでもたまに小松さんが高瀬のジャージを着ていたり、高瀬が小松さんとお揃いのキーホルダーを付けていたりすると、やはり2人が恋人同士であることは伝わってくる。
そしてそれが周りには決して見せることのない、2人きりでいる時の想像を掻き立てて、羨ましさを増長させる。
そんな恋愛スタイルは多くの生徒たちからの羨望を集め、今や2人は憧れのカップルとしてもよく知られるようになっていた。
「マジで羨ましいよなぁ、高瀬」
広斗が心底羨ましそうな声を出す。
男子たちに囲まれて楽しそうに騒ぐ高瀬と、その少し先で女子たちの中央にいる小松さんを見る。
「春太がいかないなら、俺、マジで奪いにいくけど」なんて言葉とは裏腹に爽やかな笑顔を見せる。
「相手にされるわけないだろ?」
そうたしなめる様に視線を送ると、広斗は大きく首を振る。
「わからない。そのうち別れるかもしれないし」
「絶対にない」
そう言い切った俺に広斗は笑った。
「まぁ、春太くんにはわからないと思うけどさ、男女の愛なんてシャボン玉よりもろいんだぜ」
ふと広斗に視線をやる。
そう言えば、こいつはここ1か月に限定しても、すでに3回彼女が変わっている。
シャボン玉よりもろい。
もしも男女の愛が本当にそう言うものなのだとしたら、高瀬と小松さんはきっと特別だ。
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