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1時間目の体育はあまり好きではない。
何が嫌って、まだ着替えたばかりの制服からさらに着替えると言う作業が面倒なのだ。
それならいっそジャージでの登校を許可してほしい。
加えて今の時期は授業の内容がマラソンと言うのもさらに気を重くさせる理由の一つだった。
朝一番に2度も着替えをして、校庭を走ってからまた着替えるのだ。
それこそ効率が悪いとはこのことではないのか。
そんな面倒な着替えを済ませて校庭に出ると、すでに高瀬たちがフルコートを使ってサッカーをしていた。
しかも割と本気で走り回っているように見える。
楽しそうにボールを蹴る高瀬の周りには秋菜と同じように輝かしい空気が取り巻いているように思えた。
きっと彼もそつなく人生をこなしていけるタイプなのだろう。
「あー、マジでいいな、高瀬は」
隣から恨めしそうな声がする。
花壇のへりに座って靴ひもを結び直していた広斗の視線は未だ高瀬を捉えていた。
「まだ言ってるのかよ」
足元に転がっていたテニスボールを何気なく靴の下で転がす。
「だってマジで羨ましくねぇ?
何やってもその場を盛り上げられてさ、男女問わず慕われるし、何かあれば頼りにされるし、成績だって運動神経だって平均よりは全然良いし、おまけに学年の男子全員が狙ってるような女の子と付き合えるんだぜ?
どんないいことしてきたらそんな人生歩めるんだよ」
「やっぱりそういう星の下に生まれたんじゃない?」
「星かー。どうしたらそういう星の下に生まれて来れるんだよー」
広斗が心底悔しそうな声を出して頭を抱える。
根っからの目立ちたがり屋のこいつからしたら、高瀬の人生はとてつもなく羨ましいものなのだろう。
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