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花壇で一部始終を見ていた広斗はやけににやついた表情で女子たちの群れから帰った俺を出迎えた。
「何だよ」と尖った声が出てしまう。
「いくら女に好かれるとは言え、お前のは全然羨ましくねぇな」
広斗はおかしくてたまらないと言わんばかりに俺を見上げた。
もらってきたテニスボールを半ば乱暴に元あった場所に戻し、どかりと花壇のふちに座り込む。
広斗は俺の肩に手を伸ばすと、慰めるように優しくポンポンと叩いた。
「いいじゃないの。学年一安心出来る男子なんだから」
思わずムッとして、肩に掛けられた手を振り払う。
【学年一安心出来る男子】
高校に入学して半年も経たないうちに、俺は学年の女子たちからそんなラベリングをされることとなった。
からかうとすぐ顔が赤くなるとか、何だかんだ言って何でも言うことを聞いてくれるとか、全く自覚がないことでいつの間にかそんな立ち位置を作られていた。
俺だってこんな好かれ方は望んでいない。
高瀬みたいに自分が好きだと思う女子から好かれてみたい。
とは言え、そんなことは所詮高望みでしかなく、俺には結局こう言う立ち位置がお似合いなのだ。
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