Beatrix -ビアトリクス-

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そう脅してやったが、広斗はなんてことない風に鼻で笑った。 「別に俺はチャンスがあるなら、高瀬から奪うつもりでいるし」 危険だ。 俺は小松さんに何かしようなんて少しも思っていないが、こいつは隙あらば手を出そうとしている。 俺なんかよりよほどに危険だ。 「まぁ、もし高瀬に何か言われたら、俺が一緒に頭下げてやるよ。もう不審な視線を送らないようよく見張っとくって」 広斗は一人でそう笑うと、購買へ向けて歩いて行った。 完全に他人事だと思っている。 もしもそれが事実なら、目をつけられるべきは俺より広斗だ。 歩き出しながら、俺は自分に言い聞かせる。 人望の厚い高瀬がそんな言いがかりをつけてくるはずがない。 いや、言いがかりと言い切れないところがまた不安なところなのだが、高瀬ならきっと話せばわかってくれる。 無理やりそう言い聞かせて、俺は頭を覆いつくす不安を押しやった。
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