Beatrix -ビアトリクス-

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ようやく1日の授業を終えた俺は、広斗と駐輪場に向かって歩いていた。 同じように授業から解放された生徒たちで溢れ返った廊下を抜け、靴箱で外履きに履き替える。 運動部の生徒たちに続いて玄関を出ると、すぐ横に写真部の生徒が集まっていた。 皆、首からカメラを下げ、何やら楽し気に話している。 全く関わりはないが、何だかんだよく見かけるので顔は知っている。 これからどこかに写真を撮りにでも出掛けるのだろう。 「あともう少しでやっと手に入るんだよ、俺のエレキ」 ふと隣に視線をやると、広斗はまるで子どものように無邪気な笑顔を浮かべていた。 もうすでに「俺の」と言ってしまっているところが奴らしい。 奴には前々から目を付けているエレキギターがあった。 いつだったかその画像を見せてもらったこともあったが、楽器の演奏が一切出来ない俺には一体どこがどう凄いのかまるでわからなかった。 ただ高校生からしたら目が飛び出るような金額が設定されていたことだけはあまりの衝撃で覚えている。 奴はそれを手に入れるために登録制のバイトを始めた。 飲食店のホールやティッシュ配り、交通整理なんて言う日もあった。 その日の求人によって仕事内容が変わる働き方は大変ではないかと聞いたことがあったが、働きたい時に働けるシステムはライブや練習を最優先できるので便利なのだと言った。 「あのエレキさえ手に入れば、もうちょっとずっしりした音が出せるんだよな。そしたらもう1回デモテープ作り直して、夏までには送れるかな」
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