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広斗が楽しそうに俺の顔を覗き込んでくる。
「怒らせたと思うなら、そんな楽しそうな顔するなよ」
「いや、だって楽しいんだもん」
悪趣味な奴だ。
「あ、ごめん、ごめん。マジで許して?」
広斗がそう顔の前で手を合わせた時、すぐ横を一人の女子生徒が駆け抜けていった。
あまりの勢いに俺たちは揃って足を止める。
高い位置で結ばれたポニーテールに、清潔感のある白いスニーカー。
スクールバックをリュックのように背負うその後ろ姿は間違いなく2組の小松真帆だった。
ドキリと胸が鳴る。
走っていく彼女の後ろ姿からもう目が離せない。
ポニーテールは今日も彼女の性格を象徴するように元気に大きく揺れていた。
時折、スカートが翻り、柔らかそうな太ももがちらりと覗く。
いけないと思いながらも、どうしても目が行ってしまう。
太ももまでしかギリギリ見えないことが、さらに俺の気持ちを高ぶらせる。
隣から「パンツ見えないかな」なんてあからさまな声が聞こえてくる。
俺はたしなめる様にチラリと視線を送ってから、また走っていくその後ろ姿に目をやった。
彼女はやがて歩いていた男子たちの群れに追い付くと、その中央にいた一人の髪を悪戯に触った。
そのまま横を抜けて、少し先にいた女子たちの群れに合流する。
触られた男子生徒が周りから小突かれてそれを鬱陶しそうに振り払う。
けれど、嬉しそうに笑っていることはここからでもよくわかる。
爽やかな短髪に、少しやんちゃな雰囲気。
あの後ろ姿も見間違うはずはない、1組の高瀬夕陽だ。
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