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「まったく、ひどいイヴだ!」
「ほんとね! 顔にクリームがついちゃった!」
天使もパンダも懸命にケーキを押さえていると、急ブレーキがかかったような衝撃が走りました。
きゃあっと悲鳴をあげ、ころころと転がるお菓子たち。
外からは、ゆうくんの声が聞こえます。
「ふーくん、マフラー、どこにやったの?」
「え? あれえ?」
ふーくんは、お店に入った時、少し暑いなと思ったのでした。そのときに外したところまでは覚えています。
「おとしたの?」
お兄ちゃんに聞かれて、心配になりました。
「ううん、もってた……」
「でも、いま、ないでしょ」
「うん……」
しょんぼりするふーくんに、ゆうくんはしっかりせねばと思いました。
「もどってさがしてみよう。ね」
「うん」
向きを変えて、洋菓子店の方へ戻ろうとしましたが、ふたりの肩にケーキの入った紙袋を下げているので、うまく方向を変えられません。
「ふーくん、じっとしててね」
ふーくんのまわりをゆうくんがくるりと回って、ようやく反対向きになりました。
「よいしょ、よいしょ」
ケーキがだんだん重たくなってきました。
「おいおい、忘れ物なんて、明日とりに行けばいいじゃないか」
天使が窓を見上げて叫びました。
「大事なマフラーなんじゃないの?」
パンダは箱とケーキの間に手をつっぱりました。すでに端っこの苺がひとつ、転げ落ちています。
「とにかく、見つけてもらうしかない」
サンタは祈るようにつぶやきました。
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