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「次のお客様どうぞ!」
並んでいたのは例の小さな兄弟でした。お兄ちゃんが精いっぱい背伸びをして、カウンターに予約票の控えを置きました。
「おねがいします」
女店員は、笑いました。
「あら、ボク。ママは? お外にいるのかな? ボクのおうちのケーキは一番大きいケーキよ。ボクひとりじゃ持てないわ」
「ママはまだかいしゃです」
ゆうくんは、ふーくんの手を握って言いました。
「あら、じゃあママが帰ってきてから、また来たら?」
「ええと、おとうとと、いっしょにもってかえります。ママはたぶん、おそくなるから」
ゆうくんは考え考え、言いました。今日はベビーシッターのおばさんが家にいました。ふたりのお迎えもシッターさんが来てくれました。ママは会社から、シッターさんに今日も遅くなると電話を入れたのです。
今日はクリスマスパーティをやろうと言っていたのに。
女店員は、溜息をつきました。お店も混んでいます。
「じゃあ、ちょっと待ってね」
カウンターから出てきて、大きな紙袋の持ち手に紐を2本掛けました。二人の肩から下げても傾かないように調節し、
「こうやって持って行ける? おうちは近く?」
しゃがんで二人に確認しました。二人は大満足で頷きます。
「うん、すぐだよ」
お礼をいうのも忘れて、駆け出そうとしました。
「あ、ぶつかる!」
杖をついたマダムのお尻に追突しそうになり、ふたりで、
「おっとっと!」
女店員が目を覆っている間に、お店の外に出ていきました。
箱のなかではあまりの揺れかたに、みんなが目を回しています。
「いったい、これはどうしたことだ!」
天使がずり落ちた金のわっかを直しながら頭をふりふり起き上がります。
「こどもが持ってるよ、この箱を!」
パンダがジャンプして窓から外をうかがいます。
「こどもが? ケーキを運ぶのは大人の仕事だ。こどもにゃ、無理に決まっている!」
サンタが両手を広げて主張しましたが、
「でも、大人はいない」
肩を落として天使が座り込みました。
お店の外に出た兄弟は大きな紙袋を下げて得意満面。来たときの何倍もの速さで、歩道を歩いていきます。
「ごちそうはシッターさんが買ってくればいいし、ケーキはぼくたちでとってきた。あとはママがかいしゃからかえってくればいいんだよ」
ゆうくんがふーくんに説明します。
「らくちんだね」
ふーくんも分かったようです。ママは会社からおうちへ真っ直ぐ帰ってくればいいのです。二人はお手伝いをしたのでした。
がたごと、ゆさゆさ。ケーキがだいぶ傾いてしまったので、仕方なくサンタたちはケーキの上から飛び降りて、これ以上ケーキが傾かないように支えました。
ケーキは金色のお皿に載っていましたが、これはプラスチックでつるつる足が滑ります。
「おおい、お兄ちゃん、あんたの方が持ち上がりすぎなんだよ」
サンタが呼びかけますが、兄弟は気づきません。
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