ケーキの箱は大さわぎ

7/10

32人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「動きが止まったな。トイレも大丈夫そうだ」  欄干に載せられているとも知らず、サンタはほっと胸をなでおろしました。 「少し、傾いているような気がするけど?」  パンダはまだ不安げです。天使もう頷きます。 「そうだな。揺れは止まったけれど、少しだけ傾いてる」  しん、と箱の中が静まりました。なんだか嫌な予感がしたのです。  すると、ぐらーり。  箱が、大きく傾き始めました。 「おい、なんだか変なところに置かれてるみたいだぞ」  サンタが声を震わせました。パンダが耳を澄ませます。 「水音が聞こえる! 川か何かのそばみたい!」 「落ちたら大変だ! みんなでバランスを取るんだ!」  天使のひとことで、モミの木側に傾いているケーキの上を走って反対側の星の方へ移動します。すると、またぐらり。星の方へ、傾いてしまいました。 「全員で固まるな! パンダ、お前はモミの木の方へ行け」  天使が指示を出します。パンダが、そろりとケーキの上を四つん這いで移動します。 「まだこっちが傾いてるな。わしが移動しよう」  サンタものろのろと、モミの木側へ移動し始めました。サンタがちょうど真ん中を越えようとしたときです。モミの木側ががくん、と落ち込みました。 「デブサンタ!」    天使が叫びましたが、もうサンタはモミの木側に転がり落ちていきます。  外でも叫び声が上がっていました。 「ああっケーキ!」  ふーくんのトイレを手伝おうと、ケーキの袋を支えた手を、ゆうくんが一瞬だけ、離してしまったのです。  ちょっとだけなら大丈夫だろう、と思ってしまったのです。  川の方へ傾いた箱に、ゆうくんが大急ぎで手を伸ばします。が、届きません。  黒い水の流れる川に向かって、ケーキの箱が紙袋ごと宙に浮きました。 「うわあああ」  箱の中の三人も、ケーキの表面を転げ落ちていきました。外の紙袋がガサガサッと大きな音を立て、クリームと苺が雪崩のように押し寄せます。  下は真っ黒な川です。  落ちたらケーキの箱なんて、ひとたまりもありません。 「主よ!」  天使が叫びました。  しかし、祈り空しく、ケーキは落下していきます。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加