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「動きが止まったな。トイレも大丈夫そうだ」
欄干に載せられているとも知らず、サンタはほっと胸をなでおろしました。
「少し、傾いているような気がするけど?」
パンダはまだ不安げです。天使もう頷きます。
「そうだな。揺れは止まったけれど、少しだけ傾いてる」
しん、と箱の中が静まりました。なんだか嫌な予感がしたのです。
すると、ぐらーり。
箱が、大きく傾き始めました。
「おい、なんだか変なところに置かれてるみたいだぞ」
サンタが声を震わせました。パンダが耳を澄ませます。
「水音が聞こえる! 川か何かのそばみたい!」
「落ちたら大変だ! みんなでバランスを取るんだ!」
天使のひとことで、モミの木側に傾いているケーキの上を走って反対側の星の方へ移動します。すると、またぐらり。星の方へ、傾いてしまいました。
「全員で固まるな! パンダ、お前はモミの木の方へ行け」
天使が指示を出します。パンダが、そろりとケーキの上を四つん這いで移動します。
「まだこっちが傾いてるな。わしが移動しよう」
サンタものろのろと、モミの木側へ移動し始めました。サンタがちょうど真ん中を越えようとしたときです。モミの木側ががくん、と落ち込みました。
「デブサンタ!」
天使が叫びましたが、もうサンタはモミの木側に転がり落ちていきます。
外でも叫び声が上がっていました。
「ああっケーキ!」
ふーくんのトイレを手伝おうと、ケーキの袋を支えた手を、ゆうくんが一瞬だけ、離してしまったのです。
ちょっとだけなら大丈夫だろう、と思ってしまったのです。
川の方へ傾いた箱に、ゆうくんが大急ぎで手を伸ばします。が、届きません。
黒い水の流れる川に向かって、ケーキの箱が紙袋ごと宙に浮きました。
「うわあああ」
箱の中の三人も、ケーキの表面を転げ落ちていきました。外の紙袋がガサガサッと大きな音を立て、クリームと苺が雪崩のように押し寄せます。
下は真っ黒な川です。
落ちたらケーキの箱なんて、ひとたまりもありません。
「主よ!」
天使が叫びました。
しかし、祈り空しく、ケーキは落下していきます。
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