君が見せた朝陽

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「恋くらいしたことあるでしょ! 彼女とこのあとヤりたいって思ったことあるでしょ! そういう気持ちを出せってことなの! こんなこと、言わせないでよ」  彼のシャツに皺が残ろうと関係ない。握力全開で彼の動きを封じる。 「いってえな! 無いっスよそんなの。恋なんてドラマの役でしか経験ないの! なのにミネラルと茸の恋なんてわかるわけねーだろ」  草食か! 「草食ならキノコ食いてーと思いなさいよ!」 「思えないっつーの」  仏頂面で返されて、ぷつんと理性のボタンが弾け飛ぶ。キッとメンチを切り、(かす)れ声で叫んだ。 「それがテメーの仕事だろ! あたしはテメーの恋人で、ずっとずっとお預けくらって、夕日の橋の上で待ち合わせたの! そこで(たぎ)る想いをぶつけてくれなきゃ困るんだよ!」  そこまで言って我に返る。  古風なお嬢様キャラで売っていたのに、これではヤサグレ不良女子だ。後ろで監督が台本をバサリと落とす音が聞こえる。
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