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「FUMIちゃんはばっちりだよ! 瞳がキラキラしててさ、めぐみ役にぴったり。まさに、旬の茸だよ!」
監督が聞こえよがしに言うのでますますダイヤくんが心配になる。こっちは旬の茸なんて言われても嬉しくないが、彼にとっては、
「じゃあ俺は豊かなミネラルを演じきれていないのか」
とますます懊悩を深めてしまう。
豊かなミネラルになりきれる役者はそうそういないよ、と教えてあげたい。そもそもの設定が観念的な世界なのだ。台本の一頁目には、
”遠く離れた太平洋からミネラルの化身が山の茸に会いに来た。元、大地の成分だったミネラルは彼女のなかに故郷を見いだし、彼女とまたひとつになりたいと恋い焦がれる”
と掲げられている。難易度が高いのは否めない。
ダイヤくんは熊のような男性マネージャーに肩を揉まれながら、目を閉じている。
女優よりもアイドルの生活は過酷だろう。
このあとも彼だけ打ち上げには参加せず、離島でバラエティーの撮影だとか。
彼のスケジュールに合わせてスタッフは早朝からスタジオ入りしている。
自分中心に物事が動いている、というプレッシャーもあるだろう。
女優の私に、何かできることはないだろうか、と考えていると、目の前に紙コップが差し出された。
「メーワクかけて、すんません」
落ち込んだ声が、上から降り注ぐ。
ダイヤくん自らお出ましだ。
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