君が見せた朝陽

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「全然。気にしないでください」 「隣、いいですか?」  ADさんがすかさず隣に折り畳みチェアを持って飛んできた。 「もう今日はダメです、俺」  どっ、と腰かけて言う彼に、 「今日はダメってどういうことですか?」  自分を抑えながら尋ねる。気分乗らない、とかだったらマジ許さないぞ。  ダイヤくんは背中を丸め、ため息をつき、 「なんか、考えれば考えるほどわかんなくて。ミネラルってどんな性格なんだろとか。ミネラルと茸の再会っていうのも難しいっス。再会っていうか……初対面じゃないですか」  自分の分の麦茶に口をつけながら、小声で打ち明けた。  憂えた瞳と台詞のギャップ。 「ぷ! ッアハハ! アハハハ、確かに! ククク!」  ダメ、とまらん。  笑いのスイッチが押されてしまった。 「ごめん、アハハハ! だって、クフッ、アハハハ!」  堪えようとすればするほど笑ってしまう。  ダイヤくんは目を丸くしていたが、 「FUMIさん、笑い上戸ってほんとだったんですね」 「うん、もうダメ! ミネラル役だって、フフフフフクククク」 「笑いすぎっすよ。でも真面目な話、俺かなり抱き締めてますよね? 何が足りないのか、もうわからなくて」 「うーん、力は強いけど……密着が足りないのかもしれません」 「ああ」  密着、と呟いてうつむいた。美形は見慣れているけれど、彼は色が白く引き締まった顎が魅力的だ。唇に目が行き、思わずキュン、と体が反応する。さすがアイドル、本能を掻き立てる何かがある。が、今は仕事中だ。気の迷いを振り払うように咳払いをし、彼に釘をさす。   「えーと。照れてる場合じゃないですよ」 「次は密着させてみます。よろしくお願いします」 「はい。お願いします」  スタンバイの声がかかり、駆け寄るシーンへ。歩数を再確認し顔をあげると、ダイヤくんが一層真剣な顔でスタートの掛け声を待っている。
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