君が見せた朝陽

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「用意ースタートっ」  カメラが回り始め、めぐみちゃん!豊くん!をもう一度やる。頭のなかでは「初対面だよね?」と思いながら。  予定通りの歩数で彼の腕に飛び込む。すると、ふわっと体が浮いた。  くるりっと抱かれたまま、グリーンバックと撮影機材が回転する。前髪がぱっと乱れ、全体重がダイヤくんの腕と胸にかかる。  悲鳴を思わず飲み込んだ。 「カット! こら! 何勝手なことしてるんだ! 現場をなんだと思ってる!」  監督の声が飛ぶ。私は鼓動を押さえるのに必死。浮遊した瞬間の驚きが体に残っている。   「すみません、でもこうしたほうが」  ダイヤくんが慌てて監督に弁解する。   「アイドルだからって思い上がるな!」  怒声を投げつけられ、 「じゃあどうしろっていうんスか!」     とまさかの反抗。まずい……ここは喧嘩するような場面じゃない。現場の空気は女優が作るものと、先輩に教わったことがある。咄嗟に私はその肩を掴んだ。そのままぐいぐい押して壁の隅まで連れていく。   「ちょっと離せよ、何すんの!」 「うるっさい!」  どすっ!と壁に彼を押し付ける。
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