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「ほら。裏の処理が、全然違いますよ」
「そうね。シルバーは、金の裏打が有るものね」
二人で顔を寄せ合って、ガラスケースの中を覗き込む。もちろん、二人とも単眼鏡持参だ。
展示してあるジュエリーの裏を覗き込む観覧者など、二人の他にはそうそう居ない。
人が少ないから目立たないだろうが、端から見たらさぞ変なカップルに見えるだろう。安斎は角度を変えて熱心に眺めている歌織を見ながら、くすりと笑った。
「……石の産地や似た石も、比べて見たいわ。セイロンとビルマとカシミールのサファイアと、ルビーとスピネルとルベライト」
「赤い石は、ルビー以外はそんなに人気無いですからね」
「名前でしか売らないのが問題よね。ルベライトやスピネルも、それぞれの美しさや特長が有るのに……」
一通り見た後、少し戻った奥まった所に置いてあるベンチで展示品のリストを見ながら、お互いのもう一度見たい物を突き合わせる。
ミステリークロックの展示室と現代ジュエリーはさっと軽めに、アンティークに入る年代のものやエンハンスメントが少なかった時代の石、今はあまり見られないカットを駆使してデザインされたジュエリーは、じっくり。
こういう好みも、歌織とは合う。
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