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……だが、その考えが甘かった。
「ーー痛っ! くそっ! 放せっ!」
「ガハハハ! 俺達ゴンサロス一味の船に忍び込むなんてバカなガキだぜ!」
鼻の利く悪党達に呆気なく見つかり、僕は縛り上げられるとヤツらのボスの前に引きづり出された。
やはり、海に関してはズブの素人。僕は見た目に騙され、乗り込む船を間違えた……その船は、商船に偽装した海賊船だったのである。
「水夫にも雇ってもらえねえで密航しようって口か? だが、安心しろ。俺達がお望み通り新天地へ連れてって、ちゃんと奴隷として売ってやらあ」
ヤツらの頭目、船長ゴンサロスと名乗る三角帽をかぶった髭もじゃの男が、甲板に放り出された僕を見下ろしながら言う。
「奴隷? ……じょ、冗談じゃない! 今までよりひどいじゃないか! そ、そうだ! 船長さん、僕を仲間に入れてくれよ! 掃除でも洗濯でもなんでもするからさあ!」
新天地の奴隷は死ぬまで銀鉱山や農場で家畜のようにこき使われると聞く……僕はこの航路の先に待つ最悪の未来を想像し、咄嗟の思いつきで船長の男に頼み込む。
「フン! てめえみてえなガキに海賊が務まるかよ。おい、こいつを牢獄代りに倉庫へ放り込んどけ! うるさくていけねえ」
だが、船長ゴンサロスはまるで聞き耳を持たず、大勢いるガラの悪い手下どもにそう命じた。
「でもいいんですかい? こんな汚ねえガキ、倉庫に入れちまって」
しかし、そんな手下の一人が船長のその命令に難色を示す。
よし! 閉じ込められなければ、小舟を盗むなり、どっかの島に寄った時を狙うなり、なんとか逃げ出すチャンスはある!
「なあに、金目の物は売っ払っちまって、あとはガラクタしか残ってねえ。この船にゃ牢獄向きの部屋が他にねえんだ。仕方ねえだろ?」
が、そんな僕のささやかな希望も打ち砕くように、ゴンサロスはその懸念を一蹴した。
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