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「ヒャヒャヒャヒャ、こいつ、読書なんか始めたぜ! どうせ絵しかわからねえだろうによ!」
幸い僕が字を読めるとは思っていないらしく、無知にもまったく見咎められることはなかった。
読み進めると、それは太古の昔、ソロモン王が使役していた72柱の悪魔を操るための術が書かれたものだった。
その悪魔達にはそれぞれ得意とするものがあり、どの悪魔がどんな利益をもたらしてくれるのかもちゃんと書かれている。
「……あった! こいつの力を使えば、なんとか逃げ出せるかもしれない……」
そんな72柱の悪魔の中に、今の僕の望みにぴったりな悪魔をついに見つけた。
さあ、次はどうやって召喚の魔術を行うかだ。無論、そんな儀式などしたことないが、式次第は魔導書に書いてあるので問題ない。それより問題なのはそれに用いる道具である。
当然この船倉内で調達するしかないので、僕はまたそこにあるガラクタ類を漁り、手に入れた材料で必要な道具を作った。
そして、数日後の夜……。
可能な限り準備を整えた僕は海賊達が寝静まる深夜を待ち、ついに悪魔召喚の儀式に臨むことにした。
もうどの辺りまで船は進んでいるのだろう? 用をたす時だけ外に出してもらえるが、見渡す限り大海原なので船が進んでいるのかどうかもわからない。ただ、出航時には細かった月が今は満月に近く、時は着実に過ぎていることがわかる。
そんな月の蒼白い光が格子の隙間から射し込む船の底、落ちてた古釘と紐の切れ端で作ったコンパスを使い、僕は魔導書の図を見ながら床に魔法円を描く。
絶対逃げ出せないと高を括っているためか、ここに閉じ込められている時は見張りも緩く、作業は安心して進めることができる。
とはいえ、本来はナイフを使うところ、錆びた釘ではなかなか描きづらいものがある……ガリガリと床板を削り、とぐろを巻く蛇の同心円と五芒星、六芒星を組み合わせた複雑な図形を描いてゆく。
さすがに道具が道具なのであんましうまく描けなかったが……ま、こんなもんだろう。
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