時間の国から

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時間の国から

「ありがとうな」   「麻友。ありがとう。麻友のおかげだよ……」   感激で泣き出した萌子を麻友は優しく抱きしめた。これには会場から拍手とフラッシュが一斉に光った。   そんな麻友は昔馴染みの友とおしゃべりをしていた。   「すげ?麻友。俺と写真撮ってくれ」   「涼太君、そのヒゲはわざと伸ばしているの?」     「麻友。あんた、どんな化粧品を使っているのさ」   「梓ちゃんなの?声でわかったけど。誰だか全然わからなかった?」     「元気か」   「司君は変わらないね……少し痩せたかな」   小柄な彼女はあの時と同じ顔で彼を優しく見上げていた。     「難しいお仕事をしているんでしょう?」   「そうでもないけどな」   「……無理しないでね。ご飯もしっかり食べないと」   「お前は今、彼氏とかは?」     この2人の雰囲気を察した仲間達は、密かに2人だけにしてあげようと背にしてスクラムを組むように目隠しをしてくれていたが、2人は全然気が付かずに話を続けていた。   「いないよ」   「良かった」   「良くないでしょう?私もそろそろ」   「俺がいるからいいじゃないか」   「え?また冗談言って」   麻友は頬を染めて俯いてしまった。     「わ、私。そろそろ戻らないと」   「そうか」   『そろそろですが、アリスは時間の国に帰ります。アリス、ウサギが呼びに来たよ』   「はい。皆さま、どうぞごゆっくり!」   そして手を振りながら部屋を出た麻友はホテルの廊下をゆっくり歩き、テラスのドアから外に出て、従業員用の通路を歩いていた。   「麻友!」   「え。司君。どうしたの?忘れ物?」   走って追いかけてきた彼は彼女を抱きしめた。この力が強くて麻友のカツラは落ちてしまった。     「ど、どうしたの?」  
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