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「ごめん。逢いたかったんだ……すごく!」
「司君」
「さっき逢ったら我慢できなくなった。頼む、また俺と付き合ってくれ」
「……」
「好きなんだ。本当だ、これ見て」
「何。これって。年間パスポート?」
彼女の左手に乗せられたのは、彼がここ最近、通い詰めているのがわかるものだった。
「もしかして。いつも黒いニット帽を被ってた人?ショーに来ていたけど」
「ああ。だって、あれお前にもらったやつだぞ」
「あげたっけ?」
「あのな……」
そんな彼に麻友は嬉しそうに微笑んだ。
「あのね。今日は早く終わるの。夜の飲み会には行けるから」
「本当だな」
「うん。ね、私は行くから……」
名残惜しそうな彼に麻友はそっと頬にキスをしてくれた。
そんな司は、パーティー会場に戻ってきた。
「ん?良かったじゃないか。麻友と話ができたんだろう」
「知ってたのか」
優介はキスマークがついている司が澄ましているのが面白いのでこれには触れず、彼らは司と麻友が付き合っていたのはとっくに知っていたと話した。
「だって、俺達の誰でもないんだから司になるだろう」
そこに涼太が後ろからやってきて肩を組んだ。
「俺はフラれたのに。くそ」
「ガハハ!涼太じゃ無理でしょう。ギャハハ」
そんな仲間のエールの中。
司は新婦の萌子に進んだ。
「あのな。萌子」
「何」
「ここの結婚式っていくらかかったか、後で教えてくれ」
「いいけど、どうして」
「いや。俺もここでしようと思って」
「……気が早いんじゃないの。それに今日は私の式だって言ってるでしょ!」
「いや?そんなに怒るなよ……」
「ギャハハ!早く二次会に行こうよ!麻友も来るんでしょう」
若い彼らのはしゃぐ声のパーティー会場の外は、藍色の夕焼けになり始めていた。
西日がさす会場は優しい光と愛に包まれていたのだった。
FIN
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