プロローグ

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 …が、  「…う」股下にある、それを見た私はたじろいだ。  そこにはもう一つ、カップ麺の容器があり、その中に茶色い液状の物体が並々に入っていた。  時期が時期なので、今の自分の方法だと当然腹も下すし、たまにそれが尿に混ざってしまう事もある。  両脚や、腹部にも飛び散ったドロドロの『それ』が僅かに付いており、それの正体を指し示すかのように自分の周りからは嗅ぐに耐えられない臭いが漂っていた。  『それ』は今は締まっている排出口や、その付近にも付着しているし、排出口からもまだ流れ出ている。手の平にもベッタリ付いているので綺麗にするのに時間がかかってしまうが、生き延びるためにもまだ洗い落とせない。  (嫌だなぁ…)  他の子供たちがやっているように、大の方が強い臭いを発する。  中には、わざと腐った牛乳を飲んでまで出し、それを全身に塗る子供もいる程、効果は高い。カエルや生魚もそうだが、当然体調不良のリスクも高いので、教師陣からはやらないよう注意喚起がされている。  私も、念入りに洗わなければならないので、普段はこの方法はあまり使わない。  けれど、このまま放っておいたら、カピカピに乾いてしまう…。  (…生き延びるんだ…!)  私は、『それ』を手ですくえるだけすくった。  そして…、  ー…ビチョッ!!  ドロドロの『それ』を、体に塗りつけた。  恐らく、まだ生暖かいであろう泥状の『それ』は結構ヌメヌメしていて、とても気持ち悪かった。ピリピリと皮膚も痛み出してきて、オムツを穿いた子供の苦痛も改めて分かる気がする…まあ、これも本来は人体に塗る様な物では無いので当たり前であるが。  それに臭いもキツい…ダイレクトに鼻にツンと来るので、今日この時まで飲み込んだ物が全て、胃の中から込み上げてくる…。  「…う…」  体内に残ってた分もほじくり出し、ソレも無理矢理排出させる。  そして、その分も混ぜ、すくい、擦りつけた。  髪、顔、胸、腕、股間、尻、脚…と、全身隈無く茶色く染め、屍姦対策として中にもベッタリと付けた。  乳房や中に塗る時共々、指を中に入れる時にも、底知れぬ快感が襲ってきたが、いつまでも溺れていたら周囲は暗闇に包まれて、自分は奴らにとって格好の的になる…平静を保つんだ…。  「…く…臭い…!」  だが、耐え抜かなければ、私も殺される。  毎日そうだが、今日は特に無傷で生還しなければならない。  明日は、これほどにない『特別な日』。  迎えるためにも、生き延びるのが最優先、なりふり構ってはいられない…。  「…はぁ…はぁ…」  …こうして、私の体の『コーティング』は終わった。  「うわ…あいつの格好見てみろよ…」  「顔も髪もウンチ塗れじゃん…あたし達でもそこまでしないよ…」  全身真っ茶色になった私の姿を見た他の子供達は、たじろぎ、近付こうともしなかった。  私は彼らを責めなかった。  もし、私が彼らの立場なら、やはり引いていただろうし、接するのも嫌になるだろう。  実際、そうなることをしている自分自身も、途轍もなく不愉快だし、出来ることなら、二度とやりたくない…。  「うっ…!」  「おい、今吐くなよ、マジだぞ!!」  私の体からは、止め処なく吹く冷風ですら掻き消せないほどに強い悪臭が漂い、それを嗅いでしまった者の数名がこの場で吐いた。  それに気付いた子供達が、すかさず空容器や手で吐瀉物を受け止めては、それも己や、仲間の体に塗りつけた。  (…慣れてしまうもんだなぁ…)  何はどうあれ、これが今の自分達の生活スタイルなので、最早どうしようも無い。  互いに生え揃い、下半身の『アレ』を漲らせたまま通っている男子も、自分同様二つの山を上下左右に揺らしながら駆けてくる女子も、今や普通の光景。親をはじめとした大人達は分かってくれているのか、はたまた諦めているのか、良くも悪くも気に留めやしない。  自分も、これでもまだ発展途上の素肌を見せる事も、見る事にも、最早ためらいは無かった。  少なくとも自分は、異性の裸体を見た所でまだそういう事をする訳でも無いし、向こうが自分の体を見て欲情しようが気にしない。互いに相手をしなければ良いだけなので、それを心掛ければ問題は無いのだ…。
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