プロローグ

5/28
前へ
/202ページ
次へ
 「…あ」  ふと上を見上げると、もう太陽は見えなくなっており、代わりに青かった空は赤く染まっていた。  「おい、急げ!」  「やって来たら、ションベンかけてやれ!」  排泄物や吐瀉物塗れの子供達は足早に駆け、親の元へと戻っていった。  己の生存をかけたサバイバルゲームが、もうじき始まる…それを指し示す白い光が汚物の間から漏れており、子供達は皆焦っていた。  「…やばっ!」  自分の痣も白く光り出していた。  十分に『防犯対策』を施しても、どうしても隙間から光は漏れてしまう。もし狙われたら速攻で終わりだし、最悪ヒトガタすら遺して貰えず、跡形も無くこの世から消えてしまう…。  それだけは、絶対に嫌だ…!  「急がなきゃ…!」  自分は直ぐさま、この場から駆け出した。  乳房が上下左右に大きく揺れて辛いし、敏感な所に風が当たって擽ったかったが、気にしていたら終わりだ。  「うわっ!?」  「最悪…ケツからゲリクソが飛んできたんですけど…」  ごめんなさい…停まるわけにはいかないの…私はぶつかった通行人に心の中で謝罪しながらも突っ切った。  不覚だ、出し切ったと思っていたが、まだ残っていたか…間隔はほぼ無いが、腹も冷えているので仕方ない。  家に着いたら、体を洗い流す前にまずはトイレに行った方が良いだろう…。  ー…カラン!  「あっ…!」  汲んできた湧き水を飲もうとしたら、ペットボトルの蓋が落ちた。  けれど、拾いに行けばその分時間を消費してしまうし、どの道コレは捨てるのだから、気になどしてはいられない。  今ここで死ぬわけにはいかない…生きなければならない。  足の裏にガラスの破片や針が幾つも刺さって、傷口から血が出ても、私は構わず走った。  それも全て、『彼女』と、彼女のために生きる仲間たちに会うため。  だから、生きて帰るんだ…。  通学路へと走り抜け、家へと近付いていくと、  ー…パシッ…パシッ…ピチャッ…。  「…あっ…あっ…」  肉同士がぶつかり合う音と、水がはじける音が微かに聞こえる。  無数の若い…いや若すぎる女性の喘ぎ声もだんだんと大きくなり、日が半分ほど沈んで暗くなってきているながらも、妙にうごめく肌色の何かがくっきりと見える様になる。  そして、私はとうとう音と声の正体を知ることとなった…。
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加