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「……なんてね、言えるわけない! 言えるわけないよ……」
頬を両手で覆い隠して口の中でゴニョゴニョとつぶやいた。
考えただけなのに一気に心拍数が上がってしまった。
こうしている間にも観覧車は着実にてっぺんへと近づいている。
どうしよう、どうしよう。
チケットをくれた友達と、レントくんの周りにいるきれいな女の人と、さっき手を差し出してくれたレントくんが頭の中でぐるぐると回る。
「真ー帆っ」
「うわぁっ」
気づいたらレントくんが隣にきていて、私の手を頬から引き離した。
「言いたいことあるなら言えって」
レントくんは挙動不審な私に、不機嫌になってるふうでもなく、単純におもしろがっているみたいで、口元には笑みを浮かべている。
こんな私のことをしょうがないなあって受け入れてくれている、優しい笑顔。
レントくんならきっと。
私が言ったワガママを全部かなえてくれそうな気がする。
こんなに素敵な人が、私の願いを全部叶えてくれるなんて未だに信じがたい事実だけれど。
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