言葉よりも大切なもの

　毎日仕事終わりのほんの少しの時間だけこれを探し歩いていて、そのせいで帰りが遅くなっていたこと。

　女の人は、これを準備する為に内緒で協力してもらっていた叶美の友達。

　でもそんなこと、今言うことではない。

　叶美は初めて涙を零した。

　返事こそなかったが、叶美の細い腕が俺の背中にしっかりと回される。

　きっとこれが、彼女の答え。