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6月2日 水曜日
高校2年に進級して、はや2ヶ月が過ぎた。
クラス替えをして教室も階も変わり、慣れる慣れないは関係なく今月6月末には恒例行事の体育祭が待っていた。
「疲れた……」
自宅マンションの玄関で靴を乱雑に脱ぎ捨て、陸はそう呟きながら制服のネクタイを緩めつつリビングのソファへ身を投げた。
今年のクラスメイトは大半が行事に積極的に参加する生徒ばかりで、まだどのクラスも体育祭の練習などしていないと言うのに、"帰宅部だけでも"と今日から始まったのだった。
16時過ぎにHRが終了し、そこから2時間休むことなく練習。
普段部活に所属していなければ大して運動もしていない陸にとって、それはまさに地獄であり、疲れない訳がない。
おまけに電車が帰宅ラッシュで座る事はおろか、ドアに押し付けられて30分間を過ごし疲労はピークに達していた。
玄関脇に放置された通学用鞄。
ライトの付いていないリビング。
腰に巻き付けられているベルトは少し煩わしかったけれど、それ以上に陸を誘う睡魔に勝てるはずもなくて。
夕食や入浴、課題だって、やるべき事は沢山あるのに考えるのを止めて、陸は仰向けのまま眠りについた__。
鍵が開く音がした。
この日は、同居している姉は予定だと帰ってこない。
陸は目を閉じたまま、そんな事をぼんやりと頭の隅で考えていた。
微睡みから目を覚ますのは、どうしても惜しい。
体はまだ重いし、動きたくない。
いや、きっと動けない。
「……」
姉が飲み会の日に朝帰りをしないのはとても珍しい事だったが、陸は気にせず再び眠りに身を任せようとした。
ところが。
突如、何かが陸の体に乗りかかったのだ。
ソファーの軋む音がそれを明確に示している。
"何"と動揺する間もなく、声をあげようと開いた唇は生暖かく柔らかい感触に塞がれ、何者かの掌が胸元から這い下半身に伸びた。
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