6月2日 水曜日

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「……っ!」 身の危険を感じた陸は完全に目覚め、悪寒で震える身体を必死に動かす。 相手は男だった。 重さといい、押し離そうと触れた厚い胸板、荒い息遣い。 「え」 陸の自身を確かめて、なぜか戸惑う低い声が更に性別をはっきりさせる。 退かない他人の体。 激しく動き回る熱い掌。 口腔に居座り陸の舌をも絡め取ろうと乱れる、知らない男のそれ。 たとえ一方的な行為の中に快感が覗いたとしても、見ず知らずの、しかも男によるものに素直に流されたくなかった。 「ちょっ……何!酒臭っ、アンタ誰!!」 唇が開放された直後、陸は噛みつくような勢いで叫んだ。 けれど男は驚く事もなく、その頭を陸の胸へともたげたのだ。 「男でも女でもどうだっていい……愛してんだよ」 話の噛み合わなさ、酒の匂い、それだけでもう男が泥酔してるのは分かった。 だが一体、誰の事を言っているのだろうか。 陸自身、よく"整った顔立ちをしている"と男女問わず言われる事は多いが、"愛してる"とまで思われた事はない。 女ならともかく、男には。 何より、一番気になるのがこの部屋の鍵を持っていると言う事。 「俺は男だ!誰と勘違いして……っ」 「宇美(うみ)……っ」 男は震える声で、確かにそう呟いた。 その名前は、この部屋の住人で陸の姉と同じものだ。 「姉、ちゃん……?」 思わず口にすれば、上方から落ちてきた水滴。 それの温度に、男が顔を上げて泣いているのだと陸は悟った。 「待って……姉ちゃんは女だから!明日帰っ__ 」 全てがリンクして、納得できた陸は勘違いしていることを伝えようとした。 このままだと何か間違いが起こると、本能が警鐘を鳴らしていたから。 なのに。 言葉はキスで遮られ、代わりに濃厚な水音が響き出す。 「ぁ……っや、め……っんぅ!」
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