ふたりをつなげる、私のお仕事

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「どういたしまして。上手くいって良かったわ」    千尋さんは頬を流れる涙をぬぐう。 「……結婚する前に、どうしても隆弘に会いたかったんです。私だけが幸せになってもいいのかなってずっと思っていて。あの日、私が一緒に帰っていたらもしかしたら……」  私の横に立つ彼は、首を横に振った。まるで、運命なんて最初から決まっていたのを知っているかのように。  私の背後から、車のクラクションが聞こえてきた。千尋さんはその車に向かって軽く手を振る。 「それじゃ、報酬はネットバンクの口座にお願いね」 「はい。今日は本当にありがとうございました。依頼して、本当に良かった」  彼女は車に乗り込んでいく。運転席には、精悍な顔立ちの男性が乗っていた。彼はもう一度クラクションを軽く鳴らして、私に向かって小さくお辞儀をしてから車を発進させた。  小さくなっていく車を見ながら、彼は大きく息を吐いた。 「……僕も、もう戻ります」 「ああ、ごめんね。急に呼び出して」 「いえ、僕も千尋に会えてよかった。あなたのおかげです」  彼は私の手をとり、ぎゅっと握った。また彼の体は金色の光に包まれ、光の粒子をなりゆっくりと天に昇っていく。彼を見送った私は、来た道を戻る様に歩き出していた。  向かう先は、新しい依頼主の元。  ――私の仕事は、人の心をつなげること。
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