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決意
「エリーナ。ありがとう。この惑星のために頑張ってくれて。もう少し頑張ってくれないかな」
私は聞き覚えのある声に振り向く。
「貴方、アイリッシュなの」
身体から虹色の光を発し、近づいてくるアイリッシュに驚く。
「今はアイリッシュだけど……。もう少しで、魔界の騎士サフィアになってしまう」
変わってしまったアイリッシュを前に言葉が出てこない。
「どうしてこうなってしまったのか私には分からない。けど、分かることは、私はサフィアに入り込まれてしまったと言う事。そして、これから、私はアイリッシュで無くなり、サフィアになってしまう」
「そんな……」
言葉に詰まってしまう。
「エりーナ。私の最後のお願いを聞いてほしいの。貴方の力で私を消し去って。そうすれば、サフィアを覚醒することなく、魔界へ戻す事が出来る」
「そんなこと……。私には出来ない……。それなら、覚醒したサフィアと戦うわ」
「無理よ。ガブランに苦戦し、ベルゼブとアスタロに負けてしまう貴方では。サフィアは魔界ナンバーワンの騎士。貴方の敵う相手ではないわ」
「もしかして……ベルゼブの毒を解毒し、アスタロの結界の秘密を教えてくれたのは……」
「そう。私。いや、少しずつ私の中で覚醒を始めているサフィア。良くわからないけど、サフィアの力が少しなら使えるの」
「尚更、貴方を殺す事なんて出来ない!命の恩人を殺す事なんて!」
泣きながら大声で叫ぶ。
「エリーナ。このままではサフィアは覚醒する。今のうちなら、サフィアを魔界へ戻す事が出来るの。お願い。私を消し去って」
「出来ない……。無理よ……。サフィアと戦う事を選ぶは……」
俯き、力が抜けたような感じで答える。
「まだ、そんな事を言っているの!エリーナ。その貴方の甘さが、全宇宙を滅ぼす事になっても良いの!サフィアにとって、貴方を倒すことは造作も無いことよ!」
アイリッシュの語気が更に強くなる。
「それでも……。私は……。サフィアと戦う……」
言葉に力こそこもってはいないが、私の決意の固さは崩さないつもりだ。
「エリーナ!それでも戦士なの!戦士なら最善の道を選びなさい!私を消し去れば、宇宙の平和と秩序は守られる!」
アイリッシュの言葉はどんどんと強くなっていく。
私は両肩を震わせ、表情が一気に厳しくする。
私は涙を流し続けながらも、達観しきった目でアイリッシュを見つめる。
「エリーナ。ベルゼブを倒した技は苦しみそうだから嫌……。アスタロの結界を破った技の方にして……」
アイリッシュの表情には、覚悟を超えた笑みがあった。
私はしゃくり上げながら、悔しさを全面に出し、ゆっくりと右手をアイリッシュに向ける……。
「エリーナスプラッシュ!」
私が大声で叫ぶと同時に、右手から放たれる光線に金色の光と炎が入り混じる。
「エリーナ。これで良いの。私のために泣いてくれてありがとう……」
アイリッシュは消え、光の結晶のような物が雪のように地表に降り注ぎ、消えて行く……。
私はへたり込み、四つん這いになり、涙を流しながら、何度も地面に拳を打ちつけた……。
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