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天使が降ってきた
ある晴れた昼下がり。
昼食を食べたあと、レムは昼寝をしようと草原に寝転んだ。
「………」
心地よいそよ風が髪を揺らす感触にくすぐったさを感じて、目を細める。
──気持ちよく寝れそうな風だ。
「………」
「う、うわぁああああああああぁぁぁ!!」
「んっ!?」
うとうとし始めた頃。
静かな草原に突然響いた叫び声に驚いて瞼を開くと、上から人が落ちてきた。
「きゃあああぁぁっ!?」
───ドサッ…。
驚いて避けてしまったレムは、人の落ちる音にハッとし、慌てて駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか……?」
うつ伏せに倒れていたのは、レムと同じくらいの年頃の少年だった。
──怪我がないか確認しようとしたレムの手が止まる。
(綺麗な色の髪の毛……)
倒れたままの少年の髪の毛は、光加減によって青にも見える薄い紫色だった。
──天使みたい。
「ん〜っ………。ったたた……」
ゴロッと仰向けになると少年は瞳を開けた。
今日の晴天が映りこんだかのような色と長い睫毛に、全ての意識が持っていかれる。
「あの、だ、大丈夫……?」
「あ〜、痛かったあ。鼻血出てない? 大丈夫?」
まず発した言葉が痛い。
そりゃそうだ。
あんな高さから落ちたら痛いに決まってる。
鼻血を心配する少年のために、綺麗な顔をよく観察する。
「あ、あの〜、そんなに見られると恥ずかしんだけど……」
次第に赤くなっていく少年の頬。
レムは、一つ頷くと安心したように息を吐く。
「うん。大丈夫。鼻血は出てないよ。少し顔が赤いだけかな?」
「そ、そう…、ありがとう。ぼくはマリン。よろしく」
「…わたしはレム。よろしくね」
二人で握手をする。
草原に座り直すと、隣からもの凄い視線を感じて彼を見た。
「……どうしたの?」
「あっ……、その………さっきはびっくりしたよね? 驚かせてごめんね」
眉を下げてそんな事を言ってきた。
「本当、びっくりしたんだから! いきなり人が落ちてくるし! ……でも、こっちも避けちゃったから……ごめんね?」
「いや、避けてくれてありがとう。きみに怪我がなくて良かった」
「えっ……、でも痛かったでしょう?」
「ちゃんと防御膜を作っていたから大丈夫。怪我も無かったからね。本当に巻き込まなくて良かったよ。女の子に怪我させちゃダメだから」
「へぇ〜……優しいのね」
「いやいや、そんなことはないよ」
照れたように頬をかくマリンが可愛くて、ついクスッとしてしまう。
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