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「マリンは、どうして空から落ちてきたの?」
レムはマリンの瞳を覗きながら聞く。
「いや、その……恥ずかしいんだけどさ、ぼくって宙に浮いたり飛んだりする魔法が苦手なんだ」
困ったような声色で彼は笑う。
「ああ、それで落ちてしまったの? 大変だったね…。それで、あなたはどこから来たの?」
「……隣の国からだよ」
「えっ、クリスタルから来たの!?」
レムは驚いて隣を見たが、一呼吸置くと目を輝かせてマリンに詰め寄った。
「えっ、うん。そうだけど……どうして?」
少し声を小さくしながらマリンは聞いた。
「だって、クリスタルっていえば音楽と宝石で有名な国じゃない! 別名音の国! 羨ましいわ……」
「……うちの国に来たいの?」
「ええ、もちろんよ! でも…」
レムも困ったように声を小さくしていった。
「………」
「………」
その後、二人は暗い目をして虚空を見つめた。
沈黙が背中に重くのしかかる。
「……仲悪いもんね」
「……うん」
先に沈黙を破ったのはマリンだった。
「先々代までは仲良かったのにね……」
その後、数分間二人は何も言わずに座っていた。
「……ねえ、レム」
「なあに?」
「ぼくの事は、誰にも言わないでね」
悲しげな目で見られると、心が痛む。
──自分が悪い訳でもないのに。
彼がこの国にいることでもし何かが起こってしまっては可哀想だ。
そう思ったレムは頷くと、指を差し出した。
「うん。約束」
「ありがとう」
彼は、やっぱり哀しそうに笑っていた。
堂々とお互いの国を行き来出来ればいいのに。
小さな指を絡ませながら心の中でレムは呟いた。
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