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「……マリン?」
どうしたの、と顔を上げるレム。
「ぼく、もう行かないと」
レムと過ごす時間があまりにも心地よくて、少しずつ傾く日を見ないようにしていた。
──でも、別れるのが辛くなってしまうから。
もう行かなくちゃ。
「もう行くの? もう少し話せない?」
残念そうなレムに首を振って駄目だと告げる。
「そろそろ行かないと……もしもの事があったらいけないし」
その言葉にハッとしたようにレムも立ち上がる。
「そうね……。日が暮れる前に安全な場所へ行ったほうがいいと思う。夜になると危ないもの」
子供一人で夜の街をうろうろするのは良くない。
そう思ったレムは、隣にあった体温が無くなるのが寂しい気持ちを抑えて、マリンに笑ってみせる。
「マリン、今日会えて良かった。クリスタルの人を一人でも知れて本当に良かった」
「……ぼくもだよ。きみに会えて良かった」
「……いつか、お互いの国同士が仲良くなれるといいね」
「ぼくも、そう思う」
お互いの顔に映る表情を眺め、同じように笑い合う。
「じゃあ、行くね」
レムに背を向けて彼は歩き出す。
「もう、会えないのね…」
思わず声に出してしまった。
彼の足が止まる。
──聞こえてしまっただろうか。
「レム」
「な、なに?」
少しだけ、声が裏返ってしまう。
「また明日、ここで会える?」
「えっ、また会えるの?」
驚きが伝わったのだろうか。
振り返ったレムは、暖かい眼差しでこちらを見ていた。
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