4人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
こわいものしらず
ある橋で、二人のカップルがお互いを見つめ合いたたずんでいる。
するとそこへ、通りすがりの三歳児がやってきた……。
「僕と……結こ。」
「ママ―、あの人たち、ギュッてやってチューしてるよー。」
「こらっ、指ささないの!口はさむのもダメよ!」
慌てて三歳児を抑える母親。
カップルは何も言えず、二人を見つめる。
ペコペコ頭を下げながら母親が遠ざかった後、男性のほうが咳払いをして、指輪の入ったケースを取り出す。
「結婚してく。」
「ママ、あのお兄ちゃんが持てるゆいわ、キエイー!僕、欲ちいー!」
「ちょっと、ダメよ!すみません、すみません……。」
頭を下げつつ母親が遠ざかり、男性は辺りを見回してから再びケースを突き出した。
「僕と、結婚してください!」
「……はい。」
ぎこちないプロポーズに、ぎこちない返事。
このカップルは知らない。
この橋は普通なら上手くいくプロポーズや告白をことごとく台無しにする神出鬼没の恐いもの知らず<幼稚園児>レベル:100の通学路になっていることで関係が上手くいかず別れるカップルが続出し、<別れ橋>別名<こわいものしらず橋>と呼ばれていることを。
最初のコメントを投稿しよう!