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一時間があっという間で、チャイムが鳴る音で僕ははっとする。絵はほとんど完成していた。
「描いてくれてありがとう。もう時間だよね」
先輩はそう言って、僕の描いた絵も見ずに立ち去ろうとした。
「藤峰先輩っ」
僕は先輩を呼び止める。先輩はドアの前で立ち止まり、僕の方を向く。
「朝から、ありがとうございました。先輩が言いたいこと、何となくわかった気がします」
僕がそう言うと、先輩は微笑んで答えてくれる。
「遠くへ、行きたいよね」
「はい」
「絵が、心を揺さぶるような、そんな絵の中にある奥深さの、遥か遠くまで、行ってみたいって思う」
それじゃ、と先輩は静かに美術室を離れていった。
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