届けと祈ってるの

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「そういえば、美術部の先輩って二人いたよね。美子先輩と、あと転校してきた――」 「藤峰ゆず先輩」  そうそう、と由紀はうなずいた。「よく知ってるね」と僕が言うと、由紀は何も言わずに美子先輩のスケッチブックを見ていた。 「ゆず先輩のはないの?」  そう言われて、僕はどきっとする。美子先輩のスケッチブックは見つかったが、藤峰先輩のスケッチブックは見当たらないのだった。そう言うと「残念だね」と由紀は社交辞令のように答えた。 「部活、行かなくていいの?」  由紀が吹奏楽部に所属していることは知っていた。僕が聞くと「今日はお休み」と言って、美子先輩のスケッチブックを閉じた。
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