果てへ

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「君の行く先は?」  色々な人に時折、そう問いかけられる。  時にそれはちょっとした話のタネになり、時に将来を決めよと迫るような問い掛けになる。  私の目的地はこの世界にあるのか。そこへの道はあちらかこちらか。私は思考する。しかし、一つに決めようとするといつも答えは異なってくる。  かつては超えられないと思った試練も今は容易い。昔は嫌いと決めつけていたものを今は好いている。きっとこの先も私は変わってしまう。今を幾らか失って新しい何かを少し、また少しと積み重ねていく。  そう分かってしまうと簡単には答えられない。    例え、あなたはそんな難解な答えは欲していないと察していても、私の口元はあなたの瞳に見据えられたまま凍りついたようになってしまう。   「ねえ」  あなたはもう一回そう口を開く。 「君の行く先は?」 「……遠く。わからないくらいに遠くよ」  この世界にいるあらゆる人と異なる私の目的地。そこについて私にわかるのは本当にそれくらい。 「遠くへ、か。いいね。少し一緒に行ってもいい?」 「行く先は異なるのに?」 「うん」  あなたは屈託なく笑う。 「俺も遠くへ行くから。少しくらい寄り道しても、迷っても、当たり前に思えるくらいに遠く、遠くへ行くから。方向の重なるうちは一緒にいたい。そうしたら楽しいと思ったから」  そう……と私は答える。わけのわからないやつ。他のところに行くのに一緒に行こうなんて。  なのに。私も少し一人よりは楽しいかもしれないと思った。思ってしまった。 「来たいなら好きにして」  行く先は遠く、遥か彼方。そこに着く頃には一人。  そうと知りつつも、ついてくるというのなら……今は隣を歩いてみる。  私も知らない果てに向かって。
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