運命の相手

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運命の相手

運命の相手 「切っ掛け?切っ掛けですか。そうですね、あまり格好良い話ではなのですが...」 少し恥ずかしそうに男性が口を開く。 「昔、財布を落としてしまいましてね。下ろしたてだったものですから、随分と入っていたんです。それはもう情けないくらいに取り乱しました」 「泣いてばかりいるわけにもいかず、近くの交番に駆け込んだんです。ものすごく驚かれましたよ。それはそうですよね。だって良い年した男が顔をくしゃくしゃにして飛び込んできたんですから」 「年下のお巡りさんに慰めてもらいましてね。えぇ、幸いにも財布は程なくして親切な女性が届けてくれたんです」 「お礼にとご飯に誘ったんです。話してみると存外に馬が合いましてね。あれよあれよと言う間に話がまとまったんです。正に塞翁が馬、と言うやつですねぇ」 「えぇ、全くです。根気強く慰めてくれた妻には今でも頭が上がりませんよ」
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