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自転車で走って20分。ここには俺らの基地がある。糸葉のある友達が持っていた土地を買い取った。
俺の親は共働きだから普段は家にいない。実際、飯は自炊だし、弟や妹には、もっと愛情を注いでやってほしい。夜は、弟と妹の弁当の下準備を終えるとやっと自分のことができた。だが、この基地ができてからは鞠桃が弟や妹の面倒を見てくれたり、糸葉が基地を改良して、弟や妹が楽しめる場にしてくれたおかげで、勉強にも集中できるようになった。
「まりねーちゃん! 抱っこして」
「いとにー! ここ分かんない」
そんな声を聞きながらほっとする一時は最高だった。そればかりか糸葉や鞠桃の両親も仲良くしてくれるため、弟たちはいい思い出をつくれている。弟と妹が疲れて眠りにつくと俺たちはいつも弟たちが起きないような声で話した。
「いつもありがとう。ほんと助かってるよ」
「いいのよ。私たちも楽しいから。ねぇ、坂谷」
「もちろんだよ。俺らはいつもあいつらから元気をもらってるんだ。むしろ、ありがたいぜ」
「ならよかったよ。そういや、この土地って誰からもらったんだ」
「そう言えば聞いてないよね」
「嗚呼、あんまり言いたくないが、言ってやってもいいぜ。その代わり誰にも言うなよ。鞠桃、五十」
「いいよね。雨久花」
「もちろんだよ。鞠桃」
「んじゃ、話すぜ。俺のかつての親友の日野って奴だ。性格も悪く、悪餓鬼で、得意な柔道技を急にかけてくるような奴なんだけどな……」
俺は思わず坂谷の声を張り上げて言った。
「それって日野崎籐馬か」
「何でしってんだよ。お前には関わるはずのない人物だよ。意味分かんねー」
「二人とも! 落ち着いてよ。あの子たち起きちゃうよ」
「うるさい。桃は黙ってろ!」
「モモねーちゃん、どうしたの」
「何にもないよ。ねぇ、絵描く?」
「う~ん、お休みしたいな」
「そっか、じゃあ、モモお姉ちゃんが子守り歌を歌ってあげる」
そう言うと鞠桃はこの空気に似合わない声で、子守り歌を歌った。弟はまた睡眠についた。それと共に俺たちは少しずつ落ち着くことができた。
「さぁ、本題に入りましょう。雨久花君、きっと言いたくないと思うけど話してくれない?」
「嗚呼、分かったよ」
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