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「いいよ」
「―――えっ?」
7度目の撃沈を覚悟していた私は、航太のあっさりとした返事に拍子抜けした。
今までの努力は一体なんだったんだ、ってくらいに、それはそれは、あっさりとしたものだった。
あれほど私の告白を拒み続けていたのに。
「遂に念願叶ったか」
いつものカフェで、結果待ちをしていた結子に伝えると、彼女はからかうように、にいっと笑った。
「にしても、今回は長かったね。二年近く?」
「うん」
「正直、もうチャンスはないと思ってた」
「私も」
「おめでたいところに水を差すようで悪いんだけど……」
結子は言いづらそうに、途中でカップに口をつける。
「わかってるよ」
テーブルに頬杖ついて、つぼめた唇を突き出してみせた。
やっと成就した恋を、素直に喜べない自分がいる。結子だって、その理由に気づいていた。
今になって、私を受け入れる気になった、航太への違和感。
「でもさ、」と彼女は声のトーンを元に戻して、続ける。
「これでずっと自分の好きな格好できるじゃん」
「んー、無理」
「なんで?」
「服もメイクも髪も、このままをキープ。それが条件」
「まじか……」
私ではなく、彼女のほうがため息をついた。
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