私はあなたを大好きだけど、あなたも私を大好きとは限らない。

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見た目の問題じゃないって、内心分かってはいたけど、航太の女を真似ることが、私の愛情表現にもなっていた。 残念ながら就職先は別々で、会社に入って間もなく彼は、二つ年上の女を恋人にした。 航太の会社の先輩で、麗美(れみ)という名前の、すごい美人。 仕事ではキリッとしたスーツ姿で、メイクもバッチリ。だけど普段着はシンプルなワンピースが多く、スッピンに近い薄化粧。 《出来る女》と《清楚な女性》 これには私も迷ったけど、日曜日の二人を見掛けた時に直感し、プライベートの麗美をコピーに選び、そして待った。 どうせすぐに別れるのだから。 でもそれは前例のない誤算だった。 珍しく長続きしたのは、航太が今までになく、本気で彼女を愛していたからだろう。 それはたぶん麗美も同じで、完全なる相思相愛に見えた。ひょっとしたら、いつか結婚してしまうのではないかと危惧するほど。 だから「別れた」と耳にした時は、結子に三回聞き返してしまった。 二年近く待って、さすがに諦めようとしていたのに。 麗美の転勤を機に、航太は別れを告げられたそうだ。 でもそれは表向きの理由で、本当は、他に男ができたからだと、噂されていたらしい。 航太の落胆っぷりは、それはそれは酷く、痛々しくて、声を掛けるのも躊躇われた。 それでも、そっとしておく、という選択肢は私にはない。失恋した彼に告白するのは、もう儀式みたいなものだ。 けれど、これで最後のつもりだった。 7回目もフラれて、キレイさっぱり忘れよう。 それなのに……
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