大嫌い

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 美晴が日本を発って二ヶ月。姉貴にはときどきメールが届いているが、どうやら元気でやっているらしい。 「日本に戻ったら結婚するんだって」  ちゃんとお祝いしてあげなさいよ、とコンビニで買ってきたプレミアムなアイスクリームを俺に渡しながら言った。夏が終わって涼しくなったっていうのに、なぜこのチョイスなのか。  焼けつくようだった日射しもすっかり柔らかくなって、リビングから見える庭の木々も色づき始めている。 「あーあ、あんたがみーちゃんと結婚したら、あたしとみーちゃん、姉妹になれたのになぁ」  相変わらず姉貴は馬鹿なことばかり言っている。 「ま、身内になるといろいろややこしいかもしれないし、親友のままで我慢するか。そんなわけで、落ち込むんじゃないぞ、可愛い可愛い我が弟よ」  ぽんぽんと俺の肩を叩いて姉貴は笑った。  アイスクリームは口の中にバニラのにおいを残して溶けていく。  吸い込んだままだった空気を吐き出してわずかに軽くなった心は、まるでサイズの合わない服を着ているような違和感がある。でも、きっとそれにも慣れていくんだろう。  ――大嫌いだ。  俺はいつか、この言葉を越える想いを抱くことができるだろうか。  この言葉以上の想いを、誰かに伝えたいと願う日が来るだろうか。  俺は美晴が大嫌いだった。  今日は、彼女の名前のように美しく晴れている。
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