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美晴の将来の夢はコロコロ変わった。ドラマや映画を見たり本を読んだりすると、すぐそれに影響される。小さいときは花屋さん、ケーキ屋さん、お医者さん。大きくなるともう少し具体的になって、警察官、弁護士、救急救命士とか。コロコロ変わるくせに、人の笑顔が見たいとか、誰かを助けたいっていうところは揺るがなかった。
高校を卒業すると、美晴は大学の看護科に進学した。美晴らしい選択だと思った。俺はまだ中学の制服のままで、美晴の背中はずっとずっと遠くなった。
高校生のとき、俺は告白されて何人かと付き合ったけれど、すぐにフラれた。いつもよそ見ばっかりしているからって。こんなに離れてしまったのに、俺は未だに美晴の袖を引く理由を探すのをやめられなかった。
俺が大学に入学したとき、美晴は看護師になった。姉貴が、白衣をきた美晴の写真を見せてくれたことがある。夢を叶えた美晴の笑顔は綺麗だった。俺と美晴の距離はちっとも縮まらない。
「みーちゃん、病院の先生に告白されたんだって」
「あらあら、いいじゃない。美晴ちゃんならいいお嫁さんになるわよ」
そんな会話を聞いて胸がじくりとする。美晴に追いつくためのものが俺には何もない。
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