30人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
【side_灯里】
正輝と将来の約束をした。
プロポーズなんて素敵なシチュエーションはなかったけれど、今はとても幸せで満たされてる。
きっかけは初めてした大喧嘩だった。
「味が薄い」
「だからってそんな言い方をしないで」
何度か正輝に手料理をご馳走する度に感じていた不満が爆発。もうちょっと優しく言って。
「だって、これを一生食べるんだろ? 俺」
え、あれ、それって――
「灯里の作るご飯、美味いよ」
「その台詞を先に言ってよぉ……」
泣き出した私を正輝が抱き締めてくれた。
結局「薄い」騒動はそれで終了。明るい光の下でも私は正輝に告げないと決める。
お爺さん、お婆さんになったら。だってきっと笑い話になるから。
婚姻届を取りに行く。私は正輝の前で堂々と生年月日を記入した。
「誕生日に入籍しよっか」
正輝は届けを見ながら笑ってた。言えない事や迷う事もあるけれど、やっぱり貴方が大好き。
でも、なるべく頭上の光は遠い未来でありますように。素敵な横顔に内緒で微笑んだ。
【完】
最初のコメントを投稿しよう!