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【side_灯里】
薄明かりが彼を照らす。優しい雰囲気と端正な顔立ちに惹かれて恋に堕ちた。
だから気が付かなかった。
「なんて言ったら傷つかないのっ」
「いや、それはスルーでしょ」
仲の良い友達は苦笑い。幸せならいいんじゃない? と。
大好きな彼とは毎日の様に会ってる。いつも仕事が終わってからの数時間。
「正輝!」
「灯里、お待たせ」
吹き抜けの二階から彼に手を振る。初めてそれに気が付いたのは付き合い出してすぐの頃。
明るい照明が照らす中、エスカレーターで徐々に上がってくる正輝。
今日もやっぱり―― 薄い。間違いなく薄いっ。
言えないよなぁ…… 貴方の髪が、なんて。てっぺんがね、なんて。
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