遠くへ

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遠くへ

 ◆  このおれイグニスが、まずやるべきことは人間界で人間に恐怖を与え続けること。そうすればおのずと魔法少女はやって来る。  人間にとって恐ろしい犯罪と言えば放火だろう。罪の重さも上位に組み込む程だ。だからといってビル一棟、家一軒、丸ごと燃やしてしまえば魔法少女が集団でやって来る可能性もある。そうなれば、流石のこのおれ獄炎のイグニスでも手を焼くだろうし、サタン閣下が水面下で進めていらっしゃる計画も台無しになる可能性もある。よって、この場合ボヤ騒ぎ程度が無難。  おれは、人の気配の無い高架下にある空の菓子箱に向け、技を繰り出す。 「イグニッションバースト」  菓子箱は燃えるというより、焼失した。どうやら、火力が強すぎたようだ。このおれイグニスともなれば限界まで力を抑えてもこれだけの威力になってしまう。  まあ、いいだろう。町中に落ちているものが短期間で消え失せているというのは、間違いなく不可思議な事件であることに違いない。  おれは、同じ要領で片っ端から落とし物を焼滅させていった。ビン、カン、菓子箱、菓子袋、更には川に沈んだ家電製品まで。  水中のものまで焼失させれる程の力はこのおれイグニス位にしかできないだろう。人間の恐怖に歪んだ顔、魔法少女の焦り顔を想像しながらおれは作業に勤しんだ。
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