遠くへ

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「待て! イグニス!」  勿論マイはおれを追って来る。互いにけん制し合いながら戦闘場所は変わってゆく。そして、おれは住宅街の、車一台が通れる位の狭い道路で足を止めマイへ視線を向ける。  マイは拳を構えたまま、首を動かさずに視線だけ左右に動かした。おそらく、首を動かさないのはおれに気取られないようにしようとした結果だろう。けれどそれは無意味。何故なら、この状況をおれが意図的に作り上げたのだから。 「どうした。周りが気になるのか?」 「卑怯だぞイグニス。町の人達を巻き込む気⁉」 「卑怯か……ならばマイ。あの場で戦闘が続き、貴様の仲間が助けにやって来たとしておれが卑怯だ。と言えば貴様は仲間を追い払ったのか?」 「それは――」 「シューティング☆マイ。教えてやろう。戦闘とは、相手の苦手とする場所、時間帯、物事、全てを駆使した者が勝利するのだ。ここに移動する前に貴様は、おれを足止めするなり、撤退するべきだったな。この状況は貴様のミスだ」 「くっ」  これにより、マイの可動域、光弾の射線は限定される。圧倒的有利な条件での勝負になるだろう。  更にはマイの後方。おれだけに見えている、おれに確定的な勝利を与えてくれるものが、ぱたぱたと走り寄って来る。
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