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小田政市は純白の部屋の真ん中でパイプ椅子に座っていた。いや、座らされているが適切だ。
その小田と対面する形で、同じくパイプ椅子に座っている女がいた。こちらは座っているという言葉に相応しく、その通りの居住まいで、目上の存在という感じに小田を見つめていた。
彼女は小田の知る女子高の制服を着ていた。小田はこの女子から年上の女性の美しさをまざまざと感じた。
この部屋で二人が対面してからずっと沈黙が続く。
いま自分はとても場違いな所にいる、と小田は焦れてきた。
小田は、視線を手元に落とした。
自分をここまで案内した一枚のメモが手の中にあった。
そこには、こう記されていた。堂々とした手書きの文字で。
言いたいことを言えないのはつらい。それが心に抱えてしまうようなものなら、トゲとなって、いつまでも心に突き刺さったままだ。
君の心に突き刺さったトゲは、自然と抜けやしない。事あるごとに傷みだす。まるで歯痛のようなものだ。
抜く必要もあるだろう。治さなければ。その手段はある。ここに記された地図の場所に行けばいい。きっと治るだろう――
最後に「だろう」で締めくくられていると不安にもなったが、出口の見えない悩みを抱える小田にはその道を歩くしかなかった。
そうして、途中で誰ともすれ違う事なく、この純白の部屋の扉を開けたのであったが。
小田は、メモに記された地図を改めて確認してみた。その地図に記された通りに歩いて、たどり着いた場所は、女子高のど真ん中だった。間違いなく。
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