10月1週目

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・下半期開始     「――連絡事項はこんなところかな」  和田は朝のHRにて、そう言った。 「ああ、最後に」  まだあったことを思い出した。  頭の上にピコン、と電球が浮かぶ。 「昨日も言ったけど、今日から10月だから衣替え。冬服ね」 「冬服と夏服の違いってさ」 と宇野が言った。 「上着のあるなしだけで、下は何も変わんないよな」 「夏服の方が薄いよ」 と悠希が答えた。 「でも、そんなの見た目じゃわかんないじゃん」 「まあね」 「――というわけで、ちゃんとブレザー着てくるんだよ」  和田はぱたん、と名簿を閉じた。 「それじゃ、」 「――先生、」  いきなり、環菜が立ち上がった。真剣な顔をしている。 「1つ、言いたいことがあります」 「ん?」  和田はやや面食らった。 「えっと……どうかした?」 「先生、今日は何月何日ですか」 「そりゃ……10月2日」 「ちなみに、」  宇野がこそこそ言った。 「10月1日は都民の日だから、俺たち都立高校生は休みってわけ」 「何、その補足」 と悠希が言った。 「ほら、何で10月頭なのに1日じゃないの?って思われる方もいるんじゃないかと」 「そう?」 「読者の方は全国にいるわけだから」 「何、そのドヤ顔」 「違うでしょ!」  環菜が2人の声をかき消すように叫んだ。  顔が、困惑している。 「今、何月だと思ってるんですか! ちょっとずつずれていって、そのうち直るとか思ってましたけど、差はどんどん開くばかり!」 「あんた、何をわめいてるの……」  振り返って、璃子があきれた声を出した。 「ええと、本日の東京は」  環菜はスマホを見ながら言った。 「最高気温12度、最低気温5度……12月頭並みの寒さですよ! 何が冬服だ! マフラーとコートいるでしょ!」 「いや、待て、生島」  和田が戸惑いながら言った。 「多分、お前が言ってるのはその――全く別の話だ」 「本当は9月でさ、ちょうどよく重なったと思ったのよ。そうしたらまた季節感合わせて進めると思うじゃない」  環菜はお構いなく続ける。 「そしたら結局ずれちゃって……もう1周回ったね。だって、そもそも半年の話を1年かけて連載している時点でもうだめよね」
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