文化祭編~Ⅲ.当日・夜の部~

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・20:25『ナベー・ウォーズ』 「ただいま!」  ビリリ、とあたりを震わせる大音量の声と共に、バシッとめしやの戸が開けられた。 「お帰り!」  娘に負けない大声で返すのは、毎度夏目家の母である。  一連の怒鳴り声に近いほどの声量に、環菜たちがビクッと肩をすくめた。  中には、客はいない。  真ん中のテーブルをいくつかつなげて、長テーブルをつくり、その上には鍋とコンロが3台並んでいる。  めしやで貸切、打ち上げ鍋パーティーである。 「お腹空いたよ」  目の前の光景に溶けた顔を見せた清香、よいしょと中に入って、後ろの友人たちをうながす。 「ほら、入って入って。早く閉めないと、中も寒くなっちゃう」 「お邪魔しまーす」 「お邪魔します、」  ぞろぞろと高校生たち(と、28歳と33歳)が入って行く。  ただ1人、最後尾の小崎だけ、 「ただいま」 と言ったのだった……。 「ふう、中あったかい」  環菜がほおっと息をはいた。 「かばんとコートはそのへんの椅子に適当においていいよ」  清香がてきぱきと指示をする。 「今日はもうお客さん来ないから」 「はーい」 「あと、洗面はこっちね、厨房の中。――足元、気をつけて」  みんなでぞろぞろついていく。 「あ、小崎、うちの中も教えてあげて」 と清香は言った。  8人も順番を待っていたら、時間がもったいない。  半分は小崎について行って、夏目家の住居の洗面を借りた。 「彼はあれなのかな、この家の住人なのかな」  思わず、環菜がそうつぶやいた。
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