文化祭編~Ⅲ.当日・夜の部~

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「ちょっと、あかり」  璃子が声をかけた。 「何?」 「ニヤニヤしてる」 「あら、ばれた?」 「全然、隠れてない」 「そういう璃子だって」  そして――2人同時にイシシ、と笑い出した。 「ああ、もうずっと見てたいや、あの夫婦」  あかりがいたずらっぽく笑った。 「だよね」  璃子も同じように笑って、再び小崎を視線で追う。 「もう盗撮したい」 「それ、犯罪だろ」  飯田が顔を引きつらせた。 「撮っておいて、毎晩寝る前に見たいわ」  璃子が真面目な顔で言った……。 「つくねさん、入りまーす!」  突然、清香の声が響いた。  大皿に、団子状に丸められた大量のつくね。  それを2枚、片手にそれぞれ持って、清香が歩いてくる。 「つくねさん、スタジオ入ります! よろしくお願いします!」 「撮影か」 「主演か」  大御所つくねへの挨拶の代わりに、次々にツッコミが上がった。 「ごめん、ちょっと場所空けて」  すでに野菜のお代わり分や、取り皿が並んでいるせいで、主演の椅子がない状態になっている。 「ここ、置ける」 「ちょっと宇野、あんたの皿どけてよ」 「はいよ……って、えっ、俺ずっと手に持ってなきゃいけないの?」 「――飲み物、持ってきたぞ」  続いて、小崎もやってきた。 「そうか、まだあるのか!」 「もう場所ないよ」 「あかりのお皿、横にずらしたら置けるんじゃない?」 「これとこれを逆に置けばいいのか」 「ねえ、俺いつまでこれ持ってればいいの?」 「あんたはちょっと待ってなさい!」  ああだこうだ言い合いながら、どうにかテーブルの上に皿を並べ終えた(宇野も、無事に取り皿を置くことができた)。 「鍋、いい感じだよ」  清香が湯気の中に顔を突っこんだ。  幸せそのものの顔である。 「――先、乾杯するか」 と飯田が言った。  作者も忘れていたが、一応グラスホッパーのリーダーは彼である。 「賛成、鍋始まったら乾杯どころじゃないからね」  悠希が、すでに戦闘態勢に入っている友人たちを眺めながら言った。
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